日本のアパレル業界はデザインの移り変わりやバリエーションが多いことから、アパレルに独自のデザインを加えて他社の製品と差別化を図る二次加工が重要視されています。二次加工には「プリント」「刺繍」「染色・製品染め」「洗い加工・ウォッシュ加工」「プリーツ加工」などがあり、製品にオリジナリティを持たせるうえで重要な工程です。
アパレル生産の工程で行なわれている、主な二次加工の種類や特徴について紹介します。
アパレル製品に採用される代表的な二次加工の1つで、Tシャツをはじめとした製品にプリントを施す加工法です。プリントとひとくちに言ってもシルクスクリーンプリントやインクジェットプリント、転写プリント・昇華転写プリントなどの種類があり、コンセプトに合わせて使い分けることが製品の出来栄えを左右するポイントになります。
プリントの加工工程では、プリント前の裁断品は検品済みのものを使用し、さらにプリントが終わった後もしっかりと検品することが重要です。こうすることで製品として使い物にならない裁断品にプリントしたり、プリントした製品の汚れなどに気づかず縫製にまわしてしまったりといたロスを防げます。
さまざまな種類があるプリント方法のなかでも、最も一般的なのがシルクスクリーンプリントです。色ごとに版を作成する必要はあるものの、作成した版は何度でも利用できるため、枚数が多くなるほど1枚あたりの単価が割安になるのが特徴。同じデザインの製品を大量生産する場合に適しています。
一方で、少ない枚数や多色刷りだと割高になりやすいので注意が必要です。また、プリントする位置によっては、シルクスクリーンプリントでは対応できない場合もあります。
シルクスクリーンにはさまざまな加工法があり、代表的なのが油性のラバー(ゴム)インクでプリントするラバープリントです。生地の上にインクが厚く乗ることで、厚みのある手触りとハッキリとした仕上がりになるのが特徴。そのほかにも、生地の色をブリーチして表現する抜染プリントや金や銀などを使った箔(はく)プリント、ラメプリント、発泡プリントなどの加工法があります。
インクジェットプリンターは、専用のプリンターを使い、生地に顔料インクを直接吹き付けてプリントする方法です。自宅やオフィスで使用するプリンターと同じ仕組みで、印刷用紙が紙から生地に置き換わると考えるとイメージしやすいでしょう。
シルクスクリーンプリントと違って版を作成する必要はないため、少ない枚数でもコストを安く抑えることが可能。また、繊細なデザインのプリントを得意としており、デジタルデータさえあれば思い通りのデザインを簡単に再現できるのが特徴です。ただし、フルカラー転写プリントなどに比べて、少し淡い柔らかな色味に仕上がります。
低コストで少量生産したい方や繊細なデザインを印刷したい方に向いているプリント方法です。
転写プリントは、特殊なシートにデザインを印刷し、シートを生地に乗せて熱と圧力で圧着させる方法です。インクジェットプリントと同様に版を作成する必要がないので、小ロットのプリントに適しています。色味が生地色に影響されず、グラデーションやぼかしを表現することも可能。洗濯耐久性にも問題がなく、擦れや色落ちに強いのが特徴です。
一方で、濃色の生地にプリントする場合は周りに約1mmの枠が出てしまうほか、熱を加えることで枠の跡が残ることがあるのがデメリットになります。
昇華転写プリントは、特殊なシートにデザインを印刷し、熱でシートを生地に圧着させる方法です。転写プリントとの違いは昇華インクを使用することと、熱でインクを気化させることで生地に染色するのがポイント。また、特殊な加工方法のため、昇華転写プリントで使用できる生地はポリエステルの白生地のみという制限があります。
刺繍は、針と糸を使って生地の上に絵柄や文字などをデザインする加工法です。
刺繍方法には大きく分けて手刺繡や機械刺繍、パンチニードルの3種類があるほか、生地に直接縫い付ける方法と刺繍加工を施したワッペンを生地に縫い付ける方法などがあります。糸のほかに、リボンやスパンコール、チェーンなどを使って刺繍することも可能です。
刺繍は洗濯機や乾燥器にかけても糸のほつれや色あせなどの心配がなく、洗濯強度が非常に高いのも特徴。そのため、洗濯する頻度の高いタオルをはじめ、しつこい汚れを落とすために強めの洗濯をするユニフォームや作業着などに採用されやすい加工法です。
また、刺繍はプリントでは出せない立体感や高級感を表現できることから、高級アパレルブランドの製品にも多く採用されています。
染色・製品染めは、縫製などを終えて仕上がった製品を最後に染める加工法です。生地から縫い目まで同じ染料で染めることにより、独特の風合いを演出できます。染色・製品染めの方法には、反応染めや硫化染め、顔料染めなど、さまざまな種類があり。最も一般的な染色方法は、反応染めです。
反応染めは生地の上で化学反応を起こすことにより、色を固着させます。粒子の細かな染料が生地の中までしっかりと均一に染み込むのが特徴で、きれいに発色させることが可能。生地の風合いを残したまま染められるほか、色あせもほとんどないので、洗濯もできます。
洗い加工・ウォッシュ加工は、デニム製品に用いられる二次加工です。
縫製されたばかりの何の加工もされていないデニムは、表面に糊剤や樹脂が付いたままの固い状態になっています。そのまま洗濯するとひどい色落ちや縮みを起こしてしまうため、ウォッシャーと呼ばれる自動洗浄機に入れられ、50~80度のお湯で熱処理が行われます。
この工程を洗い加工・ウォッシュ加工と言い、デニムに付いた糊剤や樹脂を落とすことで生地を柔らかくすることが可能。さらに水洗い後にタンブラーで乾燥させるため、洗濯しても縮みにくくなるメリットがあります。
また、洗い加工・ウォッシュ加工は、適度な色落ち感や淡い色のデニムを作り出す役割も担っています。ストーンウォッシュやブリーチ加工、ケミカルウォッシュなどさまざまな加工法があり、加工法によって独特な風合いを出せるのが魅力です。
プリーツ加工は製品にヒダを付ける加工法で、主に婦人用スカートやブラウス、飾りレースなどにヒダを付ける際に採用されています。プリーツ加工にはさまざまな方法があり、それらを組み合わせることで独自の柄や線を出せるのが特徴です。
プリーツ加工は、生地に何を使うかによって加工のしやすさや方法が異なります。ポリエステルをはじめとした化学繊維は、熱を加えて成形した後に冷やすと形を保つ性質があり、プリーツ加工との相性が良い素材です。一方でプリーツ加工が難しいのは綿や絹などの天然素材ですが、ウールの場合はシロセット加工という方法ならプリーツを付けることができます。
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